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●体調伝える腸からの「お便り」
辧野義巳氏 理化学研究所室長(腸内細菌学)
大腸は「病気の発信源」というのをご存知だろうか。
腸内には500から千種類にも及ぶさまざまな細菌が存在する。腸内環境が乱れると、乳酸菌などの善玉菌による発行は抑えられ、「クロストリジウム」といった悪玉菌が増えて腐敗が起きる。
「病気の発信源」の由来は、この悪玉菌によってできた腐敗物質が腸壁を通して吸収され、血液に乗って全身に回り、いろいろな病気を引き起こすからだ。
最近の研究では大腸そのものの病気だけでなく、生活習慣病やガン、認知症、アトピー性皮膚炎の引き金になっていることがわかってきた。
大腸を「病気の発信源」として保つことが大切だ。だが腸内環境を簡単に除くことはできない。
そこで注目してほしいのが便である。
便1グラムに含まれる腸内細菌は1兆個余り。
この細菌こそが体の健康状態を伝えるメッセージの運び手なのである。
健康な便は、黄色がかった褐色でバナナから練り歯磨きまでの硬さで、においはあってもきつくない。
これは善玉のビフィズス菌が多い証拠で、健康のバロメーターともいえる。
逆に悪臭を放つのは腸内で悪玉菌が優勢になっている証拠で、病気の兆しだと考えて欲しい。
腸内の健康を保つには菓子やデザート類を避け、火を通した野菜や海藻類、食物繊維をたくさん摂ることだ。
においを弱めるには善玉菌を増やすヨーグルトが有効である。
戦後の日本の食生活は、欧米化し、穀物、野菜、魚中心の伝統的な食事から、肉食に変わった。
肉類の消費量は、この40年間に約10倍に増え、食物繊維の摂取量は約半分に減っている。
若者が好んで食べるファーストフードは、高脂肪・高タンパク質の食事の典型である。
腸内環境から見ると、善玉菌を増加させ、においのきつい便やおならの源となっていることがわかる。
食べ過ぎは禁物だ。
最近の若い女性の約65%が「便秘がち」という乳業会社の調査結果がある。「ウンチって、毎日出るものなんですか」と真顔で聞いてくる若い女性も多い。
数年前、私の研究室に、クール宅急便で「食品」として送られてきた分析用の便があった。石のようにコロコロと硬く、強烈なにおいを放ち、肉食動物のような便だった。
その便の主は20歳の女性。しかも便秘が2週間も続いた後にやっと出したという。
彼女は食事はせず、おなかが空いたらお菓子を食べジュースを飲むという不規則な食生活だった。
便のにおいがきつく、出る量も少なく、排便後に残存感があってスッキリしないというのは、腸が老化している証拠でもある。
私の研究室で腸年齢と実年齢を調べると、20代の腸年齢は実年齢よりも20歳〜25歳高く、若い人ほど腸年齢の老化が進んでいることがわかった。
私は、便は文字通り、体からのメッセージを伝える「お便り」だと考えている。
便を毎日きちんと出し、どんな色で、どんな色なのかをチェックして欲しい。
「いい便を出すには、何を食べるべきか」を考えて、食生活を見直すきっかけにして欲しい。
朝日新聞1月21日 食生活改善記事より
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